「あ…お前…。」
話しかけようとしたその瞬間、
女は思い切りぶつかってきた。
と、その勢いで紙を落としそうになる。
すんでのところでつかみなおすと、
女の手は空を切った。
(この紙を奪い返そうとしているのか?)
また、ぶつかってくる。
「っおいっ!止めてやったのに、礼もなしに取り返す気か!?」
強めの口調で言うと、動きが止まる。
やっと止まったか…。
か細い声が聞こえた。
「…ぁりがとぅ、ございます…。
か、返してください。」
ほら、といって紙を渡す。
すると、受け取った瞬間に
ほっとしたような顔になり…
その顔に、一瞬見惚れた。

