「澪。どしたの?」
堤防の草原でボーっとしている、澪と呼ばれたこの少女。
この少女の名前は、日南波澪。桜沢高校2年5組。
美少女なのだが、正確にちょっとトゲがある。
そんな彼女に幼稚園からの親友、篠原葵が訊ねてきた。
葵は可愛いというより綺麗な方で、明るくムードメーカ的な存在。
「うん。ちょっと考え事」
考え事と言うのは嘘かもしれない。
ただ、あの日のことを思い出していただけ。
「澪、この前からずっとそんなんだよね・・・。
 やっぱり、お母さんとお父さ「そうだよ」
私が葵の言葉を遮り答えると、葵は悲しそうな顔をする。
「でもさぁ、そこまで未練はないんだよね。まぁ、子供より愛人を選んだっていう悲しみはあるけどね。どうせ、お父さんとお母さんは『親』じゃなくて1人の男と女だったんだよ」
私が半分諦めた様な雰囲気で言うと、葵はより一層悲しそうな顔をする。
「澪・・・」