「それから、拓巳は彼女を作ってない。
女友達もロクにいない。
女子とまともに話してるのを見たこともない。
あんなにモテるのに。
まだ・・・
姉貴を忘れてないんだ。きっと」
「ごめん。あたし・・・無神経だった」
「希美は悪くないよ。
それに、拓巳が女子とまともに話してるの見たのは
お前が久しぶりだから…」
「・・・自信ないよ。あたし
拓巳くんのこと好きじゃなくなれる自信
・・・ないよ、」
「いいよ好きだって。拓巳にいつか好きな奴ができれば俺だって嬉しい。
ただ・・・それが希美だったら
ちょっとだけ悲しいかな」
「・・・それはないから平気だよっ」
「俺だって。諦めないから。」
沈黙が、
セミの鳴き声によって
かき消される。
それが今だけ、少し安心させてくれる。

