「あ!高橋先輩きたよっ」
美咲の言葉によって、あたしと健之助についての話題は終わった。
ほっ…
とため息をついてから、廊下のほうへ目を移した。
教室の前を、ウチの学校のアイドル的存在。
めっちゃモテる高橋先輩が通った。
この学校の女子にとって、
高橋先輩を見ることは学校生活でのイベントの1つ
ともいえるほど。
高橋先輩が、朝練を終えてくる姿を見るのを
誰もが心待ちにしている。
「今日もイケてるっ」
「あの朝練のあとの汗。似合うのがすごいよなぁ〜」
得に、美咲と葉月は熱狂的なファンだ。
こうゆう人のことを、世間は“イケメン”と呼ぶのだと思う。
あんな美顔でも、
悩みがないわけじゃ…ないんだろうな
廊下を歩くたびに騒がれて
廊下を歩くのが憂鬱にならないのかな…。
ってどこかで、そう考えてしまうのは
あたしだけかな。
時々、悲しそうな目をする。
笑顔よりも先にその顔が脳裏に浮かぶのは
あたしだけかな。

