―向坂ぁ向坂ぁお出口は右側です
電車の扉が開くと同時に
あたしは唖然としてしまった。
「あ!川嶋さん。同じ電車だったんだ」
高橋先輩と偶然、同じ電車で同じ車両だった。
「いつもこの時間に乗ってます!」
「俺は火曜日だけこれ。朝練無いから、」
「初めて会いましたね」
「それか、気付いてないだけかもしれないし」
それは無いよ。
ウチの学校のアイドルと同じ電車なんて
みんなに即効メールしちゃうもん。
「あっ。買い出しの荷物。
大変だねっ。持つよ」
「あっ…大丈夫です、ありがとうございます」
―キュンッ
イテテ…
なんだろうこの。
心臓が引き締まるような不思議な痛み。
「筋トレ筋トレッ」
そういいながら、先輩は紙袋を持ってくれた。
なんだろ…
もっと冷たい人かと思ってた。