ありふれた涙


それは、彼が引っ越す3日前だった。



「お隣の祐君引っ越すんだってね」
そう、ママは何気ない顔で言った。


「え?」


聞いてない。
彼氏である祐からは何も知らされてないのだ。



「しかも、アメリカに引っ越すらしいから帰ってはこれないだろうって・・・」



なにそれ
全然聞いてないよ。
今日だってまた明日ねって笑ってたのに
わけわかんないよ。


「祐君も、受験生なのに・・・大変よねぇ・・・もう志望校もアメリカのほうにしてるみたいよ?」
あんたもさっさと志望校決めちゃいなさい!
なんて言ってママは洗濯物を干しに庭に消えていった。



うそでしょ・・・?
祐も一緒に行くって言ってたよね
同じとこ受けるんだってがんばってたよね・・・?



どうして、言ってくれなかったの・・・?


私は、真実を確かめるために祐に電話をかけた。



プルルルル・・・

「幸?」
「あ、のね・・・」
「ん?」


この先の言葉が出てこない
『引っ越すの?』
ただ、それを聞くだけなのに


「幸?大丈夫?どうかした?」
「ぁ・・・その・・・今日ね、」
「うん」
「ママが言ってたんだけど・・・祐が、祐がね・・・」
「俺が?」
「え、と・・・か、かっこいいよね!って!」
「ぶっ・・・はははははっなにそれっ!それいちいち報告しなくても!」
「ぁ、う、うん!そ、そうだよね!あはは・・・」


やっぱり言えない
無理だ

私はやっぱり弱虫過ぎる
これを言ってしまって肯定されてしまうのが怖い
祐がいなくなる現実を突きつけられるのが怖い


「・・・ち?幸!」
「ぇ?あ、ごめん」
「ボーっとしてた?」
「あー、うん・・・ちょっとだけ」
「そか・・・あのさ、今から出れる?」
「今から?出れるよ?」
「ちょっと、散歩行こう?」


散歩だなんて、彼らしくない・・・
そう思いつつわかったと返事をして急いでいく準備をした。