“赤毛の彼”は、軋む床の音に楽しんでるのか、わざと床を力強く踏みしめている。
耳にピアス……。
初めて見た……。
「東京から来た。神野リクだ。仲良くするように。」
みんなも、初めて間近で見たんじゃないかな?
多分そうそう見た人は、いないだろう。
その人を宥めるように視線が執着する。
“赤毛の彼”は、先生に言われた空いてる席につく。
この教室に、空き机はそこしかない。
もうみんなにとって当たり前になっていた、私の真ん前。
一人孤立したように、離れていた私の席も、彼が座ることによって繋がる。
だけど、
「あちゃ〜、あそこは可哀想だね」
「どうする?あんた変わってあげなよ」
「え、やだ。あんな女の前なんか……」
ダンッ
体が一瞬ビクツクくらい、大きな音がした。
