ネコと名乗った少年は、ベンチから立ち上がり座り直した、私の横にちょこんと腰掛けた。


「君は何て名前?」


前髪から覗く切れ長な瞳がどこと無く冷たい。


さっきみたいなテンションで言い返せなかった。


「乾冬歌」


言った後に思った。


ネコさんは本名名乗ってないじゃん。


「冬だけに、乾燥してるんだね。親御さんは頓知がきいてる」


くっくっと笑うネコさんに、親と名前を馬鹿にされた様で苛っときた。


言い返したいが言い返せないこのオーラは計算上?


「そして、僕と出会うことを予言してたみたいだね。イヌ」


急に優しい口調になったかと思えば、驚いて見上げた私の瞳をしっかり捉えて逃がさない。


「運命の出会いってやつ?」


再びくっくっとネコさんは笑った。


彼は私が言葉を失っている間に、立ち上がって何処かへ消えてしまった。


ネコは気まぐれ。