いつもと同じ通学路を歩いていると、どうしてだか憂鬱な気分になってくる。
「はぁ……」
人前では決してつかない溜息をつくと、朝の先生の言葉が私の頭に再び浮かんできた。
『今晩社長とお食事の予定が入っております。』
社長と呼ばれるその男は私の実の父で、そして私が一番苦手で恐れる相手なのだ。
上田は私が父さんを苦手な事を知っていてくれたから、何かと理由をつけて断ってくれていたんだけど…まさか執事が変わった瞬間を狙って誘ってくるなんて。
さすが社長まで上り詰めた男…考える事にすきが全くない。
「…上田のバカやろー…。」
何で先生に引き継ぎしとかなかったんだよぉ…。

