落ちていったその手は、パタっとさっきの場所へと戻っていった。
「麻椿…行くなよ…。」
今の俺はまるで子供。
大切なものを失いたくないがためにすがりつく、そんな子供じみた行動だ。
「…上谷。」
俺の名前を呟いた後、麻椿が大きく息を吸う音が聞こえる。
その音は何かを決心したと言わんばかりの強いもので、思わず手の力を緩めた。
「私ね、支えたい人がいるの。」
「え?」
緩めた手の力が身体の横で強まる。
支えたい人がいる、そう言った麻椿の目は真っ直ぐ俺を見ていた。
こいつ…こんなに強い目してたか?
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