「ただいまー」
「あれ、ふたりともリビングかな…?」
ヒールの音とビニール袋が擦れる音
お母さんたちだ……
遅くなると言ったのに
早めに帰ってきたみたいだった
ドキドキと心臓が鳴って、私は動揺を隠しきれなかった
涙を溜めたままシュウを見上げると
顔色ひとつ変えずに、私の上から退いた
「あ……」
私も体を起こすとさっきまで溜まっていた涙が
ぽつりと落ちてシーツにシミをつくった
私、何してるんだろう…
下を向いたまま動けないでいると
背中を柔らかいものに包まれた
あたたかい、毛布だ……
顔を上げるとシュウが背中を向けたまま
立ち上がっていた
「お前は後から来いよ…」
そして、部屋を出ていった
私をひとり残して…