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[………綾瀬さんはサポートお願いします]

「……はいです」

白一色に囲まれた部屋の中で、複数台のパソコンと向き合いながら無線に応答する一人の少女がいた。

小柄な体躯に、白い白い雪のような髪。

見るからに幼さが残る彼女こそ『A』の誇る、特A級のプログラマー。

わずか8秒で13階建てのビルそのものを掌握したハッキング能力は、彼女の才能のほんの一端に過ぎない。

紙袋に包まれたキャンディを、クルリと包装を外し、口の中に放り入れ、コロコロと舌で転がし出す。

彼女の前にあるモニター群には、ビル内部の監視カメラのライブな映像が流れている。

「……サポート、準備オッケーです」

誰に言うともなく、少女は無表情のままそう呟いた。