ここは、中国行きの飛行機の機内。

広い機内で一際小さな身体を更に小さくしているのは、『A』唯一の凡人、堀田貫(ほった とおる)。

彼が何故こんなものに乗っているのかといえば…勿論、仕事に決まっている。

グオォ〜!グオォ〜!

と、彼の横でアイマスクを付けて、デカイいびきを起てているデカイ男。

大塚亮(おおつか りょう)とにかく喧嘩が好きで強い人、三度の飯より喧嘩好き、という、子供のまま大人になったような男だ。

今回は彼にかかってきた個人的な依頼の電話が元で、貫は、こんな状況にいるようだ。

元々、亮一人が行く予定だったのだが、一人旅は寂しい、という、超わがまま発言のおかげで、貫がお供することになった。

貫は、依頼の内容を聞かされてはいなかった、ただ、今回は特にやることはない、とだけ聞いていた。

何もしなくていいなんて、それじゃあただの旅行じゃん?と、この時の貫は浮かれていた。

そんな上手い話、彼の職場にはある筈がないのに…。

そんな簡単なことに気付けない程、この時の貫は、初めて行く中国にワクワクして浮かれていた。

この先自分が、どんな目に会うか等、知る由もなく。