『A』

 
「グッ………ガハッ」

明らかに多過ぎる量の血を吐いて、床に倒れ込む。

受けた弾の数は20を越え、その内の数発は、確実に急所を撃ち抜いていた…。

ドクドクと流れ出る鮮血、瞬く間に赤い水溜まりが出来上がる。

「そ、そんな…
スペーック!!」

咄嗟に襲い掛かって来た凶弾から、スペックは少年を守ったのだ。

己の身体を、盾にして…。

「テメェェっ!!」

「ひっ………ブゲラっ!」

ドガーン!

少年が再びギレルを殴り飛ばし、壁に叩き付ける。

先程の手加減した一撃とは違い、少年の本気のパンチ。

殴られたその瞬間、ギレルは絶命した。

「スペック!
おい!しっかりしろよ!
スペーック!」

「う…うるせぇなぁ…
ちゃんと…き、きこえてる…よ…」

「っ!スペック!
もう少し頑張ってくれ!
すぐ手当てすっから…」

「いい…よ…
…もう………ておくれ…だ
わかっ…てんだ…ろ?
オメェも…よ」

スペックが受けた傷は明らかに致命傷、否、むしろまだ息があることの方が驚き、そんなレベルの怪我だった。

スペック自身は当然として、少年もまた、そのことに気付いていた。