『A』

 
       ◇

「くっ…、たった一人を相手に何をやっている!
同時だ!同時に掛かゴパッ!」

ある小隊に指示を出していた、小隊長を任されていた男の頭が、突然弾け飛ぶ。

言うまでもなく、桃色の少女による狙撃。

超長遠距離から、指揮官クラス…小隊長のみを狙っている。

指揮官クラスを遠目で探し出し瞬時に狙撃、指揮系統を混乱させる。

蛇を仕留めるには、頭。

頭を失った手足達は統率力に欠け、軍隊からただの群れに成り下がる。

そして、そうなってしまったそれらは、若くして百戦練磨の強者の、ランニングシャツ姿の筋肉少年の相手ではなかった。

………

「なるほど………」

タキシードの男が感心した声を漏らす。

「前衛と後衛に特A級の使い手がそれぞれいれば、数の差は問題にならないというわけですね
素晴らしい」

最新最強…の筈であった大国の軍隊は、たった二人の若き傭兵に劣勢に追いやられ…

「くっ………駄目だ!
退けぃ!
一旦退けぇ!
全軍後退!」

遂には、現場指揮官の号令が下る、大国軍は、後退を余儀なくされたのだ。

たった二人を相手にして、25000の軍が退いた。

「これぞ正に…一騎当千…ですね」

後退する敵兵に追い討ちを掛ける少年と少女を見ながら、男はそう呟いた。