「ガキを死なせるわけにゃあいかねぇ
下がってな」
ズイ、とスペックは前に出て、少年を自分の後ろへと追いやる。
「へっ、悪ぃけど
アンタの背中を守るつもりはないね!」
「なにぃ〜?!」
「“アンタが”俺の背中を守ってくれよ!」
単身丸腰で、迷わず敵陣に突っ込んで行く少年。
「ぅなっ!?
ば、馬鹿野郎っ!」
「喧嘩は数じゃねぇってことを教えてやるよっ!!」
その嬉々とした無邪気な姿は、少年の歳の頃には相応なものであったが、ここ、戦場に於いては、あまりに不相応なものであった。
………
「………ん?」
独立軍基地を双眼鏡で伺っていた兵士の目に、なにやら不思議ものが映る。
「どうした、何か見えたか?」
「は、はい
その、こちらに向かって来る人影が…」
「ほぉ〜…守りを固めず討って出て来たか…
この戦力差で、なかなか勇敢な奴らだな
で、どれくらい向かって来てるんだ?
100か?200か?
俺の目では確認できんぞ」
「そ、それが………
一人です」
「………なにぃ?」
「しかも、武装していません…
そしてあろうことか、スキップしながら近付いて来ます」
「ス、スキッ?!
………
こ、降伏の意思表示か何かか?
………いや!爆弾を持っての自爆、特攻かもしれん!」
「な、なるほど…それはありえますね」
「と、とりあえず…射程内に入ったら撃て」
「よろしいんですか?」
「なんだかよくわからんが気味が悪い
とっとと始末してしまえ」
「サー!イエッサー!」
………
「敵、もうすぐ射程内に入ります!」
「よし!
狙え〜〜〜筒!
撃ち方用意!
………
ファイヤァッ!」
現場指揮官の号令と共に、兵士達は一斉に、少年に向けて発砲した。
