『A』

 
「質で楽しめないなら…量で楽しませて貰おうかな
流石に俺も、あんだけの数を一度に相手にしたことはねぇからな…」

手首をほぐしながら、心底楽しそうに少年が笑う。

「オ…オメェ馬鹿か!?
あんないんだぞ!?
勝てるわきゃねぇだろ!!」

「馬鹿って、そりゃ賢い方じゃねぇけどよぉ…
でもよ、元々大国との戦力差は承知の上だろ?
今更あれくれぇでビビってんじゃねぇよ」

「あ、あれくらいって…」

スペックは身震いした。

これから始まる絶望的な負け戦を想像してのことではない。

あれだけの数の軍隊を、“たったあれくらい”と言い切った少年の言葉が、嘘偽りのない本気の言葉だと理解できたからだ。

「………
へっ、俺様としたことが、この程度でブルっちまうとは情けねぇ…」

ジャキッ!と音を立て、スペックが愛用のセミオート銃を取り出す。

「おいガキィ!
俺ぁまだオメェのこと認めたわけじゃねぇ!
信用できない奴に背中を預けるのはしゃくだが…
見せてやるぜ、真の兵士の戦い様を…」

全身を襲っていた震えがピタリと止まる、覚悟が決まったのだ。