「んぁ?
来るって…何がよ?」

スペックの目には映ってはいないが、少年の桁違いの視力は、“それ”を確かに視界に捉えていた。

“それ”は…、この小さな基地を制圧するには、明らかにあまりにも多過ぎた。

「な………
あ、ありゃあ…」

こちらへと前進して来る“それ”を、スペックもまた双眼鏡で確認した。

「ば、馬鹿だあいつら…
いくらなんでも限度ってもんがあるだろう?
何だよ!?あの数は!!」

押し寄せて来る大国軍の兵数、実に25000の大軍隊。

ガクガクとスペックは膝を震わせ、少年はワナワナと肩を震わせた。

「あぁ…ここまで多いとはな…」

あの、いつも強気な少年の声が震えている。

「くぅ〜〜〜
萌えて来たぁっ!!」

「っ!?」

「あ、漢字間違えた
萌えてどうする…
燃えるだ、燃える
うん、燃えて来たぁっ!!」

少年の震えは、恐れから来たものではなかった。

純粋に、今から訪れるかつてない戦いに対しての、喜びから来る武者震いだったのだ。