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仲間を呼んで慌てて駆け付けたのだろう、肩を弾ませながら現れたスペックに少年が言う。

「お、スペックじゃん、遅ぇよ」

「こいつらは…
マジかよ、あの嬢ちゃんが言ったのは本当だったのか…」

基地の正門近くのあちらこちらに大量に転がる敵兵達。

皆一撃で気絶させられていて、当分は目覚めそうにない。

「………ガキ…
コレ、オメェ一人でやったのか?」

「あぁ、歯ごたえのない奴らだったよ」

やや肩をすくめながら、少年は何の気無しにそう言った。

「………チッ、いい気になんじゃねぇぞ、ガキ」

「ん?あぁ…、この程度、やれて当たり前だからな
いい気になんてなるわけないじゃん」

「ヘッ、言うじゃねぇか」

そう言いながら、スペックは口端を僅かに持ち上げた。

「………」

「しっかし、あの嬢ちゃんといいお前といい、どうして気付いたんだ?」

「………」

「………おい?」

「………」

「おい!聞いてんのか!?」

「………」

少年は答えない、ただある一点を凝視し、スペックの方を見向きもしない。

「ん?どこ見てんだ?」

ようやく、少年が“なにか”を見ていることに気付いたスペックが、そう問いを投げ掛ける。

「………来る」