「二郎君…今…なんて…」

「…君とは結婚できない…
そう言った」

「………アハ、アハハ」

「奈津子?」

「何?なんでいきなりそんな冗談なんか…
その冗談、面白くないよ」

「………」

「アハ…ハ…
………ねぇ、どうして黙ってるの?」

「………」

「何とか言ってよ!ねぇ!」

「………」

「…な…なんで?」

「………」

「黙ってちゃわからないよ………ねぇ!」

「………ゴメン」

「!………バカ!」

「あ………」

泣きながら、怒って走り去る奈津子。

その後ろ姿を、健二郎は追い掛けられなかった。

「………あの時にそっくり、だな…」

自嘲の笑みを浮かべながら、草花生い茂る豪邸の中庭で、初めてのデートのことを健二郎は思い出していた…。