匠は、それら五つの当て身のコツを、全て体現していた。
これらのコツをマスターしていれば、攻撃にパワーは必要ない。
最小限の力で、最高の結果を導き出すことが可能なのだ。
匠はほんの僅かな時間で、その場にいた八九三を全員、それぞれ一撃で倒してのけた。
的確に急所を打ち抜かれた八九三達は、うめき声一つ上げることなく、その場に気絶していた…。
「フーーー
吉村君、怪我はないですか?」
「あ…僕は…大丈夫だけど…
鷹橋さんは?
あんなに撃たれて…」
「私は大丈夫ですよ
言ったでしょう?
このタキシードは、銃弾程度は通しません」
「あ…ご、ごめんなさい
車から出て…」
「いえ、気にしないで下さい…
それよりも…事務所の方へ急ぎましょう」
「え?」
「これだけ直接的な手段で仕掛けて来たんです…
山田君達も危ないかもしれません…」
「っ!!
い、急ぎましょう!」
「ええ、さ、早く車に乗って!」
コクン、と頷き、車に走る。
リムジンに乗り込み、事務所へと急ぐ二人。
そして、彼らの不安は、現実の物となって、『A』事務所に既に襲い掛かっていた…。
