全く振動を起こさずに、ヘリがビル屋上に着地する。
「じゃあ行ってくるわ」
「ヘマすんじゃないよ〜」
「わぁってらい!」
ヘリから男が一人屋上に降りると、今度は音もなく浮上していくヘリコプター、並の腕前ではこうはいかないだろう。
「さってと」
ニヤリと口の端だけで笑うと、男は軽く身体をほぐし、階段で下へと下り出した。
なんら周りを警戒せず、軽快な足取りで男は進んでいく。
賊は、事前にビルのセキュリティシステムをハッキングし、突入時、そして、篭城中の敵の侵入に備えていた。
だが、セキュリティは再ハッキングされ、彼等の目に映る監視カメラの映像は、何事もない平和な映像がループしているものへと変えられている。
監視カメラに映りさえしなければ誰も来ていない、と思い込んでいる彼等は、堂々と歩いて接近して来る敵の存在に気付けずにいた。
