――――――10年前、大きな事故が有ったのを知ってる?


バスが突然の地震でビルの下敷きになった事故。


そのバスには満員の乗客が居た。


その中に奈々。四季。お母さんお父さんが居た。


その時・・・愛理はお婆ちゃんの家に行っていていなかった。


その事故で死んだ数はおよそ40人ほど。


その中に二人だけが生き残った。母や父や他の人を身代わりにして四季は・・・


奈々だけを守った。昔から四季は強くてお母さんとお父さんに言われてた。


『奈々と愛理を守ってあげなさい』と。


四季は泣きながら・・・奈々をかばい生き残った。


愛理はそのことを知らない。ただ事故でお父さんとお母さんが死んでしまった。


それしか伝えられなかった。それに奈々も・・・知らなかった。


四季が独り言で言っているのを聞くまでは―――。


「だからね・・・?あの日・・・相川夫妻が拾ってくれる日までずっと・・・式は何もしゃべりもしなかったの。なにも口にしなかった・・・家も失って・・・ただ・・・愛理と私を守るためだけに食料などを調達してた。四季はあの時生きてなかった・・・今だって言葉使いが荒いのも・・・」


「奈々。もういいよ。」


愁がなだめる。


「・・・言葉使いが荒いのって…つまり人に危害を加えないため?」


「うん…だから近くによる女子にも話し相手にすらならない。友達が居ないのもっ・・・」


「まじでバカだ。」


「凛…」


「僕もそう思う。言えばいいのに」


「そんな簡単な話じゃないさ。でも無事だったんだから…」


「無事だった…?奈々はそうだよ」


うつむき階段の前で四季はつぶやいた。


「奈々は…守られた。私と違う。私は人を殺した」


「四季…」


もうなにも言えない。奈々はただ…泣いてる。