“どうして私じゃダメなの?”


 美香子は幾度となくそう繰り返す。自身に、または祥多に。

 しかし、答えはまだ見つからない。


 花音は外見とピアノしか目立つところがないのだ。外見しか目立つところもない事は花音と同じ美香子。


 ならば何が違う?


(性格? まさか)


 今の世の中、中身より外見だ。中身が大切だと豪語する者は減少傾向にある。

 ならば、美しければ誰でも良いではないか。そう思い、美香子の自問自答は果てを知らない。















 放課後になっても、花音は無表情を貫き通していた。

 祥多は昼食時間にいろいろ聞き出そうとしたが、美香子に引きずられ、それは叶わなかった。


「花音」


 やっと声をかける事が出来た。

 祥多はつらそうな顔をしていた。花音はそんな祥多を見ても無表情を貫く。


「なぁ花音、怒ってんのか?」


 祥多の問いかけに、花音は首を振る。


「なら……」

「ごめん。私、直ちゃんと帰るから。葉山さんと帰って」

「え?」

「じゃあ、また明日」

「おい、花音!今日は商店街に」

「……明日にしよ」


 そう言って教室から出て行く花音の後を、直樹が慌てて追った。

 呆然と立ち尽くす祥多に、美香子が近寄る。


「祥多君。花音ちゃんもああ言ってるんだし、一緒に帰ろ?」

「悪ィ。俺一人で帰るわ」

「でも」

「ついて来んなよ」