To.カノンを奏でる君

「祥多、花音ちゃん。乗んなさい」


 声がした方を見やると、祥多の母が紺の軽自動車から顔を出していた。


「悪ィ、お袋。行こうぜ、花音」

「いいの?」

「何言ってんだよ。行き先同じだろ?」

「やった」


 二人、祥多の母が回す車に乗り込んだ。

 小さい軽自動車の後部座席に座る形になってしまい、花音は頬を赤く染める。

 互いの距離が近い。


「放課後、」

「はい?!」

「何だ、その勢い」

「あ……あはは。別に」

「放課後さ、直と三人で商店街回ろうぜ」


(あ……そっか、そんな事も出来るんだ)


「うん!」


 久しぶりに心の底から笑う息子を見、祥多の母は花音に感謝した。















「いやーん! おはよ、タータン!!」

「ぐぇっ!!」


 教室に入った瞬間、思い切り抱きつかれた祥多は白眼をむいた。花音が慌てて間を割る。


「直ちゃん! 加減加減!」

「あ。ごめんごめん、嬉しくて」

「ったく! 殺す気か!」


 わいわいと三人でいつものように盛り上がってると、一人の男子が駆け寄って来た。


「祥多じゃねーか! お前、病院は?!」

「おぉ、チュウじゃん! 一週間だけ通うんだ、よろしくな」


 祥多や花音、直樹と同じ小学校に通っていた馴染みだ。


「草薙さん、誰?」


 女子の方も興味津々なようで、花音に詰め寄る。


「あ、幼なじみの時枝祥多。病気で入院してて」