To.カノンを奏でる君

 直樹の言葉は、まっすぐに祥多の胸に響いた。


(応援されるって、めちゃくちゃ嬉しい事だったんだな…)


 改めて感じる、友の優しさ温かさ。

 応援される事のありがたさを直に感じた祥多は、一つの決心を胸にする。


 ごめんねと謝る直樹に、頑張れと言ってくれる直樹に、次会う時は堂々と顔向け出来るように。


「俺、花音に会って来る」

「どんな結果でも爆発しちゃダメよ。ちゃんと、ノンノンの話聞いてあげてね」

「分かってる。いきなり来て悪かったな、直樹」

「いーえ。玉砕して泣きたくなったら来なさい! 胸を貸してあげるわ!」

「……遠慮しとくわ」

「まっ! そりゃ出るとこ出てないけどー」


 直樹はブツブツと文句を言いながら、まな板同然の胸を押さえた。

 本気で気にしているらしい直樹に、祥多は思わず笑みを零した。


 笑ってくれる祥多を見て、直樹はふと疑問を抱いた。

 祥多は今記憶喪失であるはずなのに、直樹が女装している事に少しも違和感を覚えていない様子。


「タータンは、アタシを見ておかしいとか気持ち悪いとか思わないの?」

「は?」

「だってアタシ、男なのにこんな女の格好してるのよ。口調だって」

「いんじゃね? 似合ってるし」

「え、いーの、そんな理由で」

「男だろーと女だろーと、それがお前の個性だろ」

「ぷっ。やだ、タータン! 貴方そういうとこ全然変わんない!」

「そーか?」

「……良かった。少しは、昔の面影が残ってて」

「んー。ま、俺行くわ」

「ファイトー!」

「おう」


 たくさんの想いを胸に、祥多は花音の元へ向かった。