息を切らし、捜しながらやっと追いついた祥多が目にしたものは……熱いラブシーンだった。
早河が包み込むように、花音にキスを落としていた。
音を立てて、何かが崩れるような気がした――。
嫉妬よりも何よりも、胸が張り裂けそうな痛み、そして絶望感。
キスの後、抱き合う二人。
誰の目からも見ても、お互いを慈しみ、愛し合う恋人同士だった。
(俺の入る隙なんてねぇじゃん…)
何人たりとも踏み込めない雰囲気に、祥多は悲しくて堪らなかった。誰かに思いの丈をぶちまけたかった。
唇を強く強く噛み、逃げるように走り出した。
無我夢中で走り、たくさんの家を、建物を通り過ぎて行く。
そうして辿り着いたのは、直樹の家だった。呼び鈴を鳴らし、息を整える。
直樹がいるのかどうかも分からないまま、訪ねてしまった。
(直樹……)
助けを求めるように友の名を呼ぶと、背後から声がかかった。
「タータン?」
聞きたかった、男にしては高く女にしては低い声に祥多は安堵した。
「どうしたの?!──発作?!」
そんな訳がないと思いながらも、直樹は咄嗟に言葉にしていた。
「な、訳ないわよね…。走って来たの?」
こくりと頷く祥多を、直樹は家の中へ、そして自室に通した。
適当に座るよう言い、直樹は飲み物を準備した。
冷たい麦茶を手渡すと、祥多は一気に飲み干す。直樹は苦笑し、自分の分も差し出した。
遠慮がちに首を振る祥多を押しきり、無理やり手渡すと、渋々受け取ってコップの半分まで飲んで一息吐いた。



