To.カノンを奏でる君

 話がまとまり、2対3に別れて向かい合う。


「お疲れ様ー!」

「お疲れー」


 それぞれの帰路に着きながら、皆手を振って別れる。


 花音は楽しそうに笑いながら歩いていた。


「楽しかったね、祥ちゃん」

「そうだな」

「直ちゃんと美香子ちゃんのご飯も最高においしかったし。またこんな風にパーティーやりたいなー」

「ああ」

「……祥ちゃん?」

「ん、」

「どうかした? 元気ないよ」

「普通」

「そっか」


 どことなく気まずい雰囲気で、暫くの間歩いていた。


「ねぇ、祥ちゃん」


 思いきったように口を開いたのは、花音だった。祥多は黙って耳を傾ける。


「私、県内の国立音大に行くの」

「ああ」

「それでね、大学の近くにアパート借りて一人暮らしするんだ」

「……え?」

「言ってなくてごめんね。二週間後に、ここを出る予定」

「……早河も一緒なのか?」

「うん。あ、住む所は全然違うからね?!」

「そうか」


 祥多は溜め息を吐いて俯いた。

 花音はどうする事も出来ずに隣を歩く。言わなければ良かっただろうかと、少し後悔していた。















「早河君って凄いのねー。作曲が出来るなんて」


 直樹が隣を歩く早河に話しかける。


「そんな事ないって」

「アタシ感動したわ。将来はそういう道に?」

「まあ、一応」

「応援するわ!」

「あはは。サンキュー」