「待ってよ、祥ちゃん!」


 先を行く祥多を追いかけて肩を並べる。

 祥多の顔を覗き込むと、何より小難しい顔をしていた。花音は首を傾げ、何を考えているのだろうかと考えながら歩く。

 と、よそ見していたせいで石に躓き、祥多が慌てて花音の左手を掴んで転ぶのを防いだ。


「あっ……ぶねぇな。前見て歩け」

「だって」

「だってじゃねぇ。しっかり歩け」

「祥ちゃんが何か難しそうな顔してるから、何考えてんのかなーって思ってたの」

「俺?」

「ほら、ここ」


 花音は人差し指で自らの眉間を指す。祥多はつられて自らの眉間に触れると、そこは皺が寄っていた。

 これか、と合点がいった祥多は小さく笑った。


「アイツ。早河ってさ、いつからの付き合い?」

「高1からだから……三年になるかな」

「仲良さそうだからさ。アイツもピアノやってんだ?」

「いろいろと接点が多くて。うん、作曲家になるのが夢なんだって! 良い曲作るんだよー」

「ふーん。友達って感じじゃないな。どっちかっつーと、」

「友達だよ。高校入ってから初めての友達だったから、何か少し特別な感じなのかもね?」

「……お前、アイツに告白されたろ」

「え?! 何でそれをっ」

「お前は自分の事になると疎いからな」

「ゔっ」

「友達続けてるアイツもアイツで健気だな。何か気に入らないとこでもあんのか?」

「じゃあ祥ちゃんは、女友達に好きだって告白されたら応えるの?」