わいわいがやがやと、子ども達は皆、祥多の目覚めに喜びと感動の声を上げる。

 そんな様子を見て、花音は込み上げる涙を飲んだ。


 毎週ピアノを弾いてあげる度に、子ども達は口々に祥多の身を案じていた。

 傍でそれを見て来たからこそ、花音には子ども達の喜びと感動がどれほど大きなものなのか分かる。


 ちらりと祥多の顔色を窺うと、困惑した顔で子ども達を交互に見回している。

 フォローする事をすっかり忘れていた花音は、慌てて祥多に助け船を出す。


「祥ちゃんっ」

「あ……、あぁ、みんな元気か? 心配かけて悪かったな」


 祥多は若干引き攣りながらも、子ども達にニコッと笑いかけた。

 するとたちまち、子ども達の目に涙が浮かぶ。


 これに戸惑ったのは祥多ばかりではなかった。

 花音はどうフォローしようかと迷った挙句、仕方なく普通のフォローを入れた。


「ごめんね、みんな。祥ちゃん昨日目覚めたばかりで、ちょっとまだびっくりしてるの。ほら、起きたら三年も経ってるとみんなもびっくりするでしょ?」


 花音の言葉に、子ども達は素直に頷く。


「だから、あんまりたくさん言われちゃうと、困っちゃうの。だから今日はちょっとだけにして、今度たくさん言ってあげてね」

「はぁい」


 先よりは少し気落ちした感じの返事だが、子ども達にはちゃんと伝わったようだった。

 花音がほっと胸を撫で下ろしていると、真っ先に祥多の存在に気づいた少年が言った。


「じゃあさ、花音。一言だけなら、言ってもいい?」