「ほら、君の大好きな林檎」

「何で……」


 祥多はただひたすら驚いている。目を丸くして、混乱している頭を懸命に整理しようとしている。


「中1の時に入院してから、二日に一回、林檎を買って持って来たの。その度に君は怒ってた。何でか分かる?」

「小っこかった」

「………。私がお小遣いをもらっていない事を知っていたからよ。林檎を買う為に、家の手伝いをしていたと知っていたから」

「その貴重な金で林檎を買ってたから怒ったってか」

「うん。それが嬉しくて、続けたんだけどね」


 くすくすと笑いながら、林檎を袋から出す。


「まさかこれも…」

「んー。昔は手伝いした分をもらえたから、手伝いを前提に決まった金額をくれる今とは違うのかな? 一緒かなぁ?」

「…………」

「ま、いいじゃんね。今食べる?」

「……おう」

「ではでは剥かせて頂きます」


 引き出しの一番上の段を開けると、飴玉やストロー、割り箸、紙皿などが入っていた。


(ありゃりゃ。配置が変わっちゃったかな)


 三年前までは、果物ナイフは一番上の段に入っていたのだ。


 次に二番目の引き出しを開けたところ、青いアルバムだけが入っていた。

 何だろうかと手に取ると、表紙右の下の方に、見に覚えのある字で『メリークリスマス!』と書かれてあった。直樹の字だ。


 あぁ、と花音は声を上げた。これは三年前の、花音と祥多と直樹で最後に過ごしたクリスマスの時の物だ。

 直樹から祥多へプレゼントされたアルバム。