「ちょっと直ちゃん、いつの間にこんな写真撮ったのよ!」

「んふふー。懐かしいでしょ? 中三の時のクリスマスパーティーで撮った写真。ノンノンが聖者の行進を弾いて、タータンがそれを見守ってる」

「何でここに展示されてるの!」

「アタシもびっくりよ。まさか展示されてるなんて」

「え?」

「いやね、入社試験の時にお気に入りの写真を出せって言われて、それ出したのよ。そしたら山重さんがお前の彼女かって訊いて来て……彼女じゃないけど世界一大切な人だって答えたら、採用されちゃった」

「それだけで採用されたの?」

「ええ。山重さんは豪快な性格してるから。……良い写真だって言ってくれたわ。ここで展示されるなんて夢にも思わなかったけど」


 直樹は嬉しそうに、自らが撮影した写真を見つめる。


「本当に懐かしいわ。タータン、こんなに優しく、愛しげにノンノンを見つめていたのよ」


 ほら、と花音に見るように促す。

 花音は溜め息を吐きながらもう一度その写真を見つめる。そして、見た事を後悔した。

 熱くなる目頭、震える口許を押さえて背を向ける。

 直樹は花音の行動に驚き、目を瞠った。


 小さく嗚咽を漏らした花音の震える肩をそっと撫で、直樹はこの写真を見せてはいけなかったのだろうかと不安になる。


「ごめんね、ノンノン。気に障っちゃった…?」


 直樹の小さな声に、花音は首を振る。それからゆっくりと直樹の方へ振り返り、直樹を見つめた。


「何であんな優しい顔…っ」

「ノンノン?」