「明日は嵐が来るんじゃないの? 貴方がそんな事言うなんて」


 ほんの少しの気恥ずかしさを隠すように強気に言い放つ。

 直樹はそれを歯牙にもかけずに続ける。


「茶化すな。真剣に言ってんだよ。お前今つらそうじゃん。そんな風に傍にいてもらっても嬉しくないっつーの」


 美香子はハッと気づいたように口許を覆った。

 今、直樹に言われるまで気づかなかった。


 まさか、そんな──。


(私、つらそうな顔して祥多君の傍にいたの……?)


 目を潤ませる美香子の肩を叩き、溜め息を吐く直樹。


 何故だか優しい直樹に驚かされてばかりの美香子は、涙を零しながら尋ねた。


「どうしてそんな優しいの? 私、今も昔も……貴方の大切な花音ちゃんを言葉で傷つけてばかりなのよ」

「これでも成長したんだよ、失礼だな。……て言いたいとこだけど、今日は特別。お前の気持ち、分かんなくもないからな」

「え?」

「祥多が傍にいて欲しいと思ってるのは花音だって言った話。それ口にすんの、勇気要ったろ」

「………」

「強くなったじゃん。見直した」


 少しだった涙が止まらないほどにはらはらと零れ落ちた。そうしてやっと、美香子は気づく事が出来た。


 この三年間、どんな思いで祥多の傍にいたのかを。


(花音ちゃんの言った事当たってる。祥多君の傍についてあげる為に、私、自分の事犠牲にしてた)


 今までつらかったと泣いているのが、何よりの証拠。

 自分の事を両立させながら祥多の傍にいたのなら、きっと今泣いてはいなかった。