ぎゅっと拳を握った。
花音が来ないと決めたのには相応の意味があると分かっていたはずなのに、つい勢いに乗じて責めてしまった。
これでは昔と何も変わらない。美香子は後悔の念に襲われる。
溜め息を吐いて顔を上げた。鏡の中の自分と目が合う。
(綺麗になった…、花音ちゃん…)
三年前は可愛さが勝っていたが、今は落ち着きが出て大人に近づいている。
見違えるほどに綺麗になった花音に、嫉妬の念を感じてしまう。
「モテるんだろーなぁ…」
「それはもう」
突然の声に驚き、美香子は右に向いた。
そこにいたのは、壁に凭れて缶珈琲を啜る直樹。
見るや否や、直樹が左手に持っているココアを投げて来た。
反射条件でそれを受け止めた美香子は、驚いて直樹を見る。
直樹は相変わらず涼しい顔をして珈琲を啜っていた。
「今日も一人釘さして来たし」
気のせいか、直樹の目には微かに苛つきが窺える。
美香子は手の中のココアを見、再び顔を上げた。不本意だが、言わなければいけない事がある。
「あ、ありがとう」
「どーいたしまして」
少し落ち着いた様子の直樹に胸を撫で下ろし、美香子は花瓶に丁寧にかすみ草を生けた。
「花園君、大分雰囲気が変わったわね。男だって事を再認識させられたわ。どういう心境の変化?」
「……覚悟を決めてやって来たのは花音だけじゃないって事だ」
「え?」
花音が来ないと決めたのには相応の意味があると分かっていたはずなのに、つい勢いに乗じて責めてしまった。
これでは昔と何も変わらない。美香子は後悔の念に襲われる。
溜め息を吐いて顔を上げた。鏡の中の自分と目が合う。
(綺麗になった…、花音ちゃん…)
三年前は可愛さが勝っていたが、今は落ち着きが出て大人に近づいている。
見違えるほどに綺麗になった花音に、嫉妬の念を感じてしまう。
「モテるんだろーなぁ…」
「それはもう」
突然の声に驚き、美香子は右に向いた。
そこにいたのは、壁に凭れて缶珈琲を啜る直樹。
見るや否や、直樹が左手に持っているココアを投げて来た。
反射条件でそれを受け止めた美香子は、驚いて直樹を見る。
直樹は相変わらず涼しい顔をして珈琲を啜っていた。
「今日も一人釘さして来たし」
気のせいか、直樹の目には微かに苛つきが窺える。
美香子は手の中のココアを見、再び顔を上げた。不本意だが、言わなければいけない事がある。
「あ、ありがとう」
「どーいたしまして」
少し落ち着いた様子の直樹に胸を撫で下ろし、美香子は花瓶に丁寧にかすみ草を生けた。
「花園君、大分雰囲気が変わったわね。男だって事を再認識させられたわ。どういう心境の変化?」
「……覚悟を決めてやって来たのは花音だけじゃないって事だ」
「え?」



