「嘘だ……っ!!」


 ぐっと唇を噛み締め、拳を握る。


「あぁあぁぁ!!!」


 世界の終わりに立ったように泣き叫ぶ花音を、直樹は強く抱き締めた。

 ノンノン、ノンノンと繰り返す直樹の手が、腕が、震えている。

 直樹も今、花音を抱き締めながら、知ってしまった事実と戦っていた。

 一人立ち尽くす美香子も顔を覆っていた。大きく肩を揺らして泣いている。


「嫌あぁぁっ!!」


 花音の悲痛な叫びがフロアに響き渡る。


 この上ない苦しみと痛みが皆の心を抉る。

 行く宛のない苦痛はフラフラと漂い続ける。


 祥多の花音を呼ぶ声が、花音の頭で反芻していた。


 花音──。


 笑った顔が、皆の中でも一際似合っていた。

 彼は、優しく爽やかな初夏のように笑む彼は、誰よりも一番、輝いていたんだ──。