奥の方の席に案内された由希と花音は、向かい合わせになるように座った。


「セイロンティーとオレンジジュース」

「かしこまりました」


 愛らしい笑顔の店員は一礼し、厨房の方へ下がった。


「ここの紅茶はね、とってもおいしいのよ」


 にっこりと笑む由希に、花音も笑み返した。


「急にごめんね」

「いえ、大丈夫です」


 何となく沈黙が流れ、由希は俯き気味に視線を落とした。

 躊躇っている様子から、大切な話なのだという事が感じられた。いつもなら由希は何でも気さくに話しかけて来るのだ。


 ちっとも進展しない内にセイロンティーとオレンジジュースが運ばれて来た。

 由希は運ばれて来たセイロンティーを啜る。由希に礼を言い、花音もオレンジジュースに口をつけた。


 カチャンと音がして、花音は顔を上げた。由希がティーカップを置き、まっすぐに花音を見つめていた。

 見つめられている花音は思わず姿勢を正す。


「いつか花音ちゃんに話そうと思ってた」

「私に?」

「ええ。ずっと機会を窺っていたんだけど」


 何だろうかという風に花音は耳を澄まして次の言葉を待った。


「ごめんね、あんまり良い話じゃないの。大丈夫かな」


 気遣う由希に首を横に振って返した。大丈夫だと。

 由希は安心したように、静かに口を開いた。