「生まれて初めて渡すね」
はにかみながら、花音は紙袋を差し出した。
祥多はこの瞬間を噛み締めるように花音からバレンタインチョコを受け取る。
「サンキュ」
嬉しさを隠しきれない様子の祥多に花音は微笑んで、美香子と直樹の方へ振り返った。
「さ、食べよっか」
「え?」
花音の唐突な言葉に、美香子は首を傾げた。
花音が直樹に目を配らせると、直樹は苦笑してパイプ椅子を準備し始めた。
「ほらほら祥ちゃん、中身出して」
花音は腰に手を当て、祥多に指示する。
指示された祥多は慌てて紙袋の中身を机の上に出した。
トリュフ、マフィン、パウンドケーキ。とても一人では食べきれない量のお菓子だ。
「確かに祥ちゃんにあげるけど、一人で食べるよりみんなで食べるのが一番でしょ」
呆気にとられていた祥多だったが、あまりに花音らしい発想に吹き出した。
彼女にとってのバレンタインチョコは、想いを伝える品物なだけではなく楽しむ代物でもあるようだ。
「さ、美香子ちゃんも座ってー」
花音が美香子に椅子を勧めると、美香子は驚いたように目を見開いた。
花音は何だと尋ねる代わりに、にっこりと笑んだ。
「花音、ちゃん…。今、名前」
「呼んだよ。美香子ちゃん。私だけ名字で呼ぶのは不公平だよね」
美香子は泣きそうになりながら、か細い声で花音に尋ねた。
はにかみながら、花音は紙袋を差し出した。
祥多はこの瞬間を噛み締めるように花音からバレンタインチョコを受け取る。
「サンキュ」
嬉しさを隠しきれない様子の祥多に花音は微笑んで、美香子と直樹の方へ振り返った。
「さ、食べよっか」
「え?」
花音の唐突な言葉に、美香子は首を傾げた。
花音が直樹に目を配らせると、直樹は苦笑してパイプ椅子を準備し始めた。
「ほらほら祥ちゃん、中身出して」
花音は腰に手を当て、祥多に指示する。
指示された祥多は慌てて紙袋の中身を机の上に出した。
トリュフ、マフィン、パウンドケーキ。とても一人では食べきれない量のお菓子だ。
「確かに祥ちゃんにあげるけど、一人で食べるよりみんなで食べるのが一番でしょ」
呆気にとられていた祥多だったが、あまりに花音らしい発想に吹き出した。
彼女にとってのバレンタインチョコは、想いを伝える品物なだけではなく楽しむ代物でもあるようだ。
「さ、美香子ちゃんも座ってー」
花音が美香子に椅子を勧めると、美香子は驚いたように目を見開いた。
花音は何だと尋ねる代わりに、にっこりと笑んだ。
「花音、ちゃん…。今、名前」
「呼んだよ。美香子ちゃん。私だけ名字で呼ぶのは不公平だよね」
美香子は泣きそうになりながら、か細い声で花音に尋ねた。



