体の大きな父さんがいきなり次男を殴った。



小さな体の薫が飛んだ。


薫は震えて泣いている。


「光、一緒に風呂に入ろう。薫は自分が間違った事をした事が、分かっているのか。」


泣きながら薫が答えた。


「父さん、もう二度とこんな事はしないよ。光は僕の弟だから、無視なんてしない。光といつも一緒にいるよ。」


薫はこの事を人権作文に書き、人権冊子に載った。



その時、薫が私に言ったのだ。



父さんのパンチが凄く痛くて、二度とあんな事はしたくないと思った。


この痛みは絶対忘れない。


そして、殴られた痛みより光を置き去りにした心の痛みの方が、辛かったと作文に書いてあった。


泣いては駄目なのに、涙が止まらない。


薫にも沢山辛い思いをさせているのだと、その時思った。


光だけに寄り添うのではなくて、薫の気持ちをもっと考えてあげないといけなかったのだ。


これからは薫の話も聞いて行こうと、自分に言い聞かせた。