光と一緒に帰ると父さんと薫がいた。



びしょ濡れの光を着替えさせていると、父さんの怒鳴り声が聞こえる。



「薫は雨の中で吐いていた、光を置いて来たのか?」



普段、父さんは大きな声を出したりしない人。



「友達が光が汚いと言ったから、光を置いて来た。友達と帰らないと仲間はずれにされると思った。」


そう言いながら、薫が泣き出した。



光も泣いている。



「薫はそれでいいと本当に思ったのか。具合が悪い弟を雨の中に置き去りにして、本当に良いと思ったか。」



薫、どうしちゃったの。



薫が光を雨の中に置き去りにしただなんて。



嘘でしょ。



薫は泣き続けた。



「お父さん、ごめんなさい。本当は光に声かけて一緒帰ろうと思ったけど、友達に汚いから置いてこうと言われて、光を無視した。」



本当にごめんなさいと、何度も謝る薫。


薫が友達に仲間外れにされたくないと思って取った行動だった。


薫の気持ちが分からなくもないが、雨の中に置き去りにされた光を思うと切なくて。


どんな思いで雨の中に立っていたのだろうか。


大好きな薫に無視をされて。


こんなとき、薫にどう声をかけて良いのか、分からなかった。