夏休みだ。
今日から長い長い一ヶ月半の休暇が幕を開ける。

休暇といっても形だけで
受験を控えた中学三年生にとって夏休みほどの地獄はないだろう。

朝から晩まで塾にかよい
家に帰って寝て、また塾に行く。ただそれの繰り返しでしかないのだから。



「浅倉さん、聞いてますか?」



『あっ、はい』



そしてあたしも
平凡で純粋な受験生の一人だった。


……彼と出会うまでは。