「分かってるよ、そんなに悪い人じゃないって。それに、あたし怒ってないからさ」
あれは挑発したあたしも悪かったし…、今窓直してくれてるみたいだし。きっと、感情を忘れただけ。
思い出せば、きっとまたハチみたいになれるはずだよ。何てったって、ハチの友達だもんね。
「そっか、よかった…」
そう言って微笑むと、ハチはあたしの首もとに手を当てた。少しだけ、ピリッと痛みが走る。
「すぐに治るから、少しだけ我慢して。なるべく痛くないようにする」
そう言ったとたんに、傷口に痛みが走った。感じたことのないような痛みが、首もとにある。
我慢、我慢。
手のひらをギュッと握り、目をつむって我慢する。予想以上に、手当ては痛かった。
「はい、終わり」
急にスッと痛みがなくなったかと思えば、ハチの手があたしから離れた。傷口があった場所に触れてみると、そこにはもう何もなかった。
「すごい……もう治っちゃったんだ…」
痛かったけど、すぐに終わった。もう二度と怪我はしないでおこう、何となくそう思った。
「服に血はついたままだから、着替えておいで。俺は先にリビングに戻ってるから。」
頷いて立ち上がると、ハチは部屋から出て行った。最近、ハチがますます人間に見えてきた。勘違いならいいけど、死神には見えない。
翼もあるし、目は深い赤色だし、鎌持ってるし、間違いなく死神なんだろうけど。



