『那智くん……』



「でも――おれはもう逃げない。

自分のために…」




ゆっくりと私の方に歩いて目がそらせない。



「だからオレは言う。
―桐島が…茜が



…――好きだ」




『!!』



冷たい風が吹いた。

髪が揺れて、私と那智くんの距離は近かった。



「茜……」



ヒヤリと頬に那智くんの手が触れる…。



どんどん顔が近くなる――

その真っ直ぐな瞳に戸惑う私の姿…。





『ッ――!!』



唇が触れるかと思った瞬間

“逆の力”が体に働いた。



ふわりと香る知ってる匂い―…。