「んー…どれがいいですかねー…」
「こいつにあったのか…」
先輩と別れた私達は今、鍛冶屋に来ている。
何故なら、本来の目的であった私の刀を買うために。
「だいぶ時間が経ちましたね~」
「お前が甘味食べるって言い始めたからだろ」
沖田さんに付き合わされたせいでかなりの時間を消費した。
「でも、美味しかったでしょう?」
確かにあの甘味は美味しかった。
それに、そのおかげで先輩に会えたのも事実…。
少しは沖田さんの勝手な行動のお陰でもある。
「桜さん、何かいいの見つかりましたか?」
「いえ…、いまいちしっくりくるものが無くて…」
此処に来て、かれこれ半刻は経とうとしていた。
それなのに、未だこれといった刀が見つからない。
これじゃあ、門限の時間になってしまう…。
焦る気持ちがどんどん、大きくなっていく。
第一、刀ってどうやって選ぶものなのか…?
あぁ、分からない…。
「何かお探しですかね?」
と、後から少し年老いた男性の声が届いた。
後ろを振り向くと少し腰の曲がったお爺さんがそこに立っていた。
コクリ、と頷けばお爺さんは「どんな刀をお探しかね?」と優しい笑みを向けてきた。
「はい、あの…"俺"、刀を買いにきたの初めてで…選び方とかが分からないんです」
と、正直に述べれば、「そうかい、そうかい」と言って店の中をぐるぐると回り始めた。
どうやら、私にあった刀を探してくれるようだ。