先輩は目を頑(かたく)なに閉じ、ポツリ、と呟くように言った。
「言葉がでなかった」
それもそうだろう。
目を閉じて想像してみた。
私を追いかける先輩。
やっと追いついたと思って目を向けると、そこには宙を舞っている私。
なんとも、残酷な場面だっただろう。
数分前に話していた人が今目の前でトラックに跳ねられている。
寒気がした。
つい、身を固く寄せた。
「そんな顔するなよ」
ふと、声がかかり先輩の方を向くと少し困ったような顔をして笑っていた。
「ここに、皺よってるぞ」
そう言って、自分の眉間を指差した。
慌てて私は自分の眉間を隠すように触れて、「…寄ってないじゃないですか」と告げると何故か竜哉先輩は笑っていた。
何が面白いのかさっぱりわからない。
「そう怒るなよ」
「怒ってませんよ」
「ははっ、そうかそうか」
もしかしたら私、泣きそうな顔でもしてたのかな?
だから先輩は困った顔をしてたのか。
「すみません…」
「ん?…どうしたんだいきなり?」
先輩はいつも変わらない笑顔で私を受け入れてくれる。
昔から、ずっとずっと私を見捨てないで面倒を見てくれる。
彼は私の家族のような存在だ。
そんな彼の笑顔を見詰め「…いえ、なんでもありません」と私はいった。
