「久しぶり…だな」


視線の先には、確かに竜哉先輩がいた。


幻なんかではない。本物だ。


これは夢なんかではない。


「お久しぶりです…先輩」


「元気にしてるか?」


まるで、兄のような質問をしてくる。


「はい。」


「そうか」


私が答えると先輩は原田さんと沖田さんに「ちょっと、二人にさせてくれないか」と言った。


「あぁ、わかった」


原田さんが答え、二人は少し離れた場所へと移動した。


そして私達は川の傍に近づき、腰を下ろした。


しばらくの間、沈黙が訪れる。


川のせせらぎが耳に届く。


沈黙を破ったのは先輩だった。


「まさか…、お前がこっちの世界に来ているとはな…」


思ってもいなかった。と川を見つめながら先輩は言った。


"こっちの世界"とは…つまり、この時代…"江戸時代"のことを示しているのだろうか。


「はい…、私も正直驚きました」


あの、桜の木の近くでトラックに跳ねられた日。


私自身、こんなことになるとは夢にも思っていなかった。


何故私はこの時代の飛ばされたのか…


神様の仕業なのか、と時折思った。


しかし、この世に神という存在がいるはずない。


いたとしても、私は信じない。


………信じたくない。信じられない。


残酷な運命しか与えてくれない神様ならば、私は嫌いだ。