世の中、不思議なことだらけだ。
「桜…」
「竜哉先輩…」
目の前の光景が信じられなくて、私はただその場に佇んでいた。
これは、夢…?
よくある漫画や小説ではここで、頬などを自分でつねったりするんだろうが、今の私はそれどころではない。
思考回路が停止中で、唖然と立ち尽くすことしか出来ないでいる。
「桜、こいつ知り合いなのか?」
しばらく動けずにいる私に原田さんが竜哉先輩を指さしながら質問してきた。
「………」
だが、私は驚きのあまり声が出せない。
「桜…お前、その格好…」
竜哉先輩もまた、私と同じように驚き動けずにいた。
そんな私たちを見て、何かを感じとったのか原田さんが、「とりあえず、場所を変えよう」と言って私たち四人は歩き始めた。
――――――…
着いたのは河川敷。
ここなら邪魔者も入らないと思ったのだろう。
案の定、今は私たち四人以外には誰もおらず川の流れる音しか聞こえてこない。
そのせいかつい、意識がぼーっとし川をただ眺めてしまった。
「……あの、桜」
そんな私に声をかける竜哉先輩。
「…はい」
私は、ハっと意識を戻して竜哉先輩に向き直った。