「桜さん、こっち向いて下さい」
明かり一つない暗い部屋の中。
唯一の明かりと言えば、閉めきった障子から月の光が差し込んでいるだけ。
沖田さんは私の顔が赤いのを知ってか知らずか、そんな事を言ってきた。
「……嫌です」
否、多分知っているんだ。
沖田さんの口調が楽しそうだもん。
私が「嫌」と言うと沖田さんがクスリと笑った気がした。
「そう言わずこっち向いて下さいよ」
グイッと、沖田さんの顔が近づいたような気がする。
耳元に妙な違和感がある。
その違和感が何なのか知りたいが、知るためには沖田さんの方を向かなければならなくなる。
そのため、違和感を知ることが出来ず何だかもやもやしてきた。
向こうかな…?
しかし、未だに赤く染まっている頬のため、沖田さんに何度言われようと頬が戻るまでは向きたくない。
…向けない…
だから私は我慢して何も言わない事にした。
「……」
「桜さん…こっち向いて?」
