ぼぅっとドングリを
取りだした。手のひ
らで転がしてみる。
ゴキブリの背のよう
につやつやとしてい
る。小2の時のあた
しには、こんなに綺
麗なものは拾えなか
った。
「ねぇ、このみ。こ
のドングリ覚えてる
?」
「は? 知るかよ。
バカじゃないの。」
「だって」
にやりとしたカナに
髪を引き抜かれた。
痛覚はマヒしている
。目の前が暗くなる
。
覚えているほうが、
おかしいのだ。こん
な、こんな、はした
ドングリのことなん
か。たかがドングリ
なんだから。たかが
子供の時の小さすぎ
るでき事だったんだ
から。
こんなことで
ショック受けるなん
ておかしい。死ねっ
て言われるよりキツ
いなんて変だ。



