「バッグみせて」
きっとゆみは、蝶の
羽をもぐのが好きだ
ろう、となおはなん
となく思った。なに
かを追いつめたく
て、うずうずしてい
るような笑顔。
「いいよね?」
このみのバッグを持
ってきて、カナはじ
りじりチャックをあ
けていく。何も言え
ずにうつむいている
彼女のことを面白が
っている。
バッグのなか見られ
るくらいどうってこ
とないと、なおは思
う。たいしてなんも
入ってないし。教科
書とか切り刻まれさ
えしなければ、全然
いい。でも、このみ
は嫌がっている。全
身でその行為を拒絶
している。なら、あ
けてしまうのは、い
けないことなのだ。
「やめなよ」
じっとしていられな
くて、つい口を出し
てしまった。



