斎藤さんはゆみ達を
横目で見て、席を立
ち、教室から出てい
った。
陰険な雰囲気
を感じ取ったのだろ
う。降りはじめの雨
みたいにぽつぽつと
、クラスメイトが教
室から出ていく。
残った級友は、好奇
心と嗜虐性(しぎゃ
くせい)がとけあっ
た目で、ゆみとなお
の緊張状態を眺めて
いる。
田中きみひろだけは
、無関心に配膳台を
ふいている。
「そいえばさ、トン
ちゃんなんか描いて
るんだって?」
「え?」
唇のみ笑って、この
みは首をゆるく傾け
る。
「男子が言ってたよ
。こないだ日直で日
誌つけてたっしょ、
その時、マンガっぽ
いの描いてたって」
「えー、まじぃ?」
ねっーとりした驚き
の声があがる。



